第二次世界大戦中のカラー映像について


毎年8月はテレビ等で戦争について語られることが多くなります。そんなこともあり、以前何処かのテレビ番組で第二次大戦中にカラーフィルムを用いて撮影された映像のことを思い出しました。戦時中の映像や写真と言うと、多くが白黒のもので、ノイズが酷く、動きもギクシャクしているものを想像します。しかし、私がテレビで見たものは今とさほど変わりないカラー映像で当時の様子が鮮明に映し出されていました。

記憶が曖昧なのですが、その映像は日本の写真屋さん?の人が、戦争により輸入が停止され入手困難となったカラーフィルムを用いて撮影したものだったと思います。60年以上も前の戦争と聞くと、私達若い世代には遥か昔の出来事の様に感じますが、よく見かける白黒映像や白黒写真、漫画、イラスト等が当時の実際よりも古臭く見えてしまうこともその原因の一つだと思います。つまり、当時の人々や景色そのものが白黒で、動きもゼンマイ人形の様にギクシャクしていたかの様に錯覚しているのではないかと思うのです。

カラーで映し出されたその映像には当時の人々が、動きもスムーズに町を行きかっていました。説明が無ければ戦時中の映像とは信じがたいものでした。確かに物質的な面(クルマや建物、社会インフラ等)では、時代を感じさせますが、写っている人々は驚くほど今と変わらない姿なのです。髪型、服装、顔つきetc. 多少時代は感じても、今その辺を歩いていても全然おかしくないものでした。ところが、その時代の日本は間違いなく軍事国家で、多くの人々が戦地に向かい、神風特攻隊が実在し、町にはプロパガンダが溢れていたのです。

「昔の日本は軍事国家で、そもそも今の日本とは違う」こんな考えがかなり揺らいでしまいます。リアルなカラー映像で普通に町を歩く人々は、今と同じ日本人です。戦争が始まり泥沼化する以前なら、もっと今と変わらない人々の生活があったと思います。古い白黒映像だけ見ていると、戦争をしていた時代の人々は、そもそも今とは違う人々で、今の時代の日本人に戦争など有り得ない!と思いがちですが、これを見ると極普通の日本人が戦争をしていたことがよく分かります。そんな、親近感の湧く当時の人々が、原爆を体験したり、特攻隊で軍艦に体当たりしたり、また敵兵を殺したりしたのかと思うと、より一層リアルに戦争の恐ろしさが伝わってきました。実は50年、60年と言う年月はそんな昔のことでは無いのだなと感じました。

現在、日本の自衛隊がイラクに派遣され、アジア諸国では日本の軍国化を懸念する声も強くなっています。私も含め、当の日本人は「何でそんなこと心配するのかねー?日本がそんなことする分けないのに」と安心しきっていますが、このカラー映像を見たら、そののんきな安心が少し不安に変わると思います。私自身、普段はあまり、戦争や平和のことを深く考えたりしませんが、たまたま見かけたカラー映像がとても印象的だったので、今回のコラムにしてみました。皆さんも、戦争の話題に限らず、昔の白黒映像や写真を見る機会が有ったら、想像で色を付けて見てはいかがでしょうか?きっと違った印象になり、新しい発見が有ると思います。


2004年8月17日  藤井稔也


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