コラム
気になるシェーファー社の今後
シェーファーという万年筆メーカーをご存知でしょうか?1912年、アメリカはアイオワ州フォートマジソンの宝石商から転じて、世界的な万年筆メーカーとなった由緒ある会社です。画期的なインク吸引方式を発明するなど業界に大きな影響を与え、1951年には日本の吉田茂首相が国連憲章調印式で同社のペンを使用した他、ニクソン、レーガンといった歴代の米国大統領にも愛用されました。品質の証としてクリップに付けられた白い「ぽっち」、ホワイトドットが特徴です。1971年に日本のセーラー万年筆社と販売並びに技術提携することになり、高級万年筆として広く日本の文具店に並ぶことにりました。特にタルガシリーズは同社を代表する万年筆で愛用していた方も多いのではないでしょうか?このペンはスリムなボディーに流線型の個性的なペン先が特徴で、筆圧にも強く、調整にも適したなかなかのペンで、現在私も愛用しています。
一時はパーカーやモンブランに次いで有名な海外ブランドとなったシェーファーですが、最近店頭で見かけなくなりました。私の知るところでは、大阪や神戸の有名店や百貨店の売り場にもほとんど無いか、古いものが数本残るという感じです。スミ利にも、旧製品が数本残るのみです。舶来筆記具を扱う問屋さんも、最近シェーファーはさっぱり売れていないと言っていました。実は、人気のタルガシリーズも数年前から廃番となり、現在のラインナップはタルガの角を丸くして太軸にした様な1本¥55,000(税別)もする高価なものと、スチールペン先の低価格品が数種類しか用意されていないのです。これでは、売れないと言うよりも売るものが無い!と言った感じです。
聞くところによるとシェーファー社は、フランスのボールペンメーカーであるビック社の傘下に入り、経営が見直されている様です。因みにそのビックは、日本で30年以上発売元となってきた廣済堂商事から、権利を買い戻し、ビック廣済堂株式会社として、100%ビック資本で日本市場に挑むようです。シェーファーの輸入をしているのはまた別の会社ですので、ビックの日本戦略とシェーファーは無関係かもしれませんが、愛好者として気が気ではありません。現在、ビックの一ブランドとなっているだけに、もう少しメーカーとしてのポジションをはっきりさせて、品揃えを増やして欲しいものです。
実は私には、贔屓のメーカーが左前になるというジンクス!?があって、コーリン鉛筆の倒産、スキー板のカザマ倒産、クルマのいすゞは乗用車部門国内撤退など、ろくなことにならないのです。まさか、次はシェーファーが??? まあ、そんなことは無いでしょうが、せっかく良い万年筆やボールペンを作れるメーカーなので、もう少し日本でも元気になってもらいたいと思っている次第です。
追記(H16.7.18)
実はこのコラムを書いたちょっと後に、ビック廣済堂がシェーファーの取扱いを開始することになり、販社からご一報いただきました。今後どうなっていくかは分かりませんが、今後の展開が楽しみです。新しいコラムに書こうかと思いましたが、取り合えず追記という形にしました。
愛用のシェーファー・タルガ万年筆
写真では照明の具合で随分ピカピカに見えますが、実際はもっとくすんでいます。30年程前のモデルだと思いますが、ボディーに変色が見られ、売らずに残されていたものを私が手に入れたという、まあ、言ってみれば不良品の売れ残りでした(汗)。ところがこのペンが具合が良くて、一番長く使っています。ペン先も自分で調整して、パイロットのブルーブラックインクを入れて使っています。できればこのタルガ・シリーズを復活させてもらいたいですが、メーカーにもそれなりの理由があったのでしょう、難しいところです(笑)。