次は消しゴムの高級化!?

このところ、様々な文具に本物志向の高級品が登場して話題になっていますね。一番代表的なものはやはり筆記具で、万年筆やボールペンの高級モデルが人気を得ています。また、ノートや便箋、手帳といった紙製品においても紙質を追求したものが増えるなど、ちょっと割高でも品質や使い心地を優先して選ばれるお客様も増えている気がしています。 

そんな中、皆さん消しゴムはどんな製品をお使いでしょうか? 消しゴムは多くの方にとって子供の頃から愛用している非常に身近な文具であり、贔屓のメーカー、サイズ、カタチ、硬さ、消字性能、色、ニオイ!?・・・、実は意外と小さなこだわりを持っているのではないかと思います。 ところが大人になるとどうも、他の文具よりもこだわって選ぶことが少なくなる様な気がします。消しゴムへのこだわりは小学校、中学校までにピークを迎えているのかも!?

小学生の頃は、コーラの香りのする消しゴムや、ネリ消しなんかが流行っていて、文具というよりはオモチャ的な要素が大事でしたよね。ですが、消しゴムは小学生が所有できる数少ない文具の一つですので、子供でも意外と「品質」や「性能」を重視している面もあります。最近の子供達も、それぞれに好みの硬さや贔屓のブランドがあって・・・。面白いものです。

今売れている消しゴムをいくつか・・・。  これがヒット中のトンボ、モノワンです。
今人気の消しゴムをいくつか・・・。右の写真がトンボのモノワン(¥157)です。勿論ゴムは詰め替えOK。

ただ、私の個人的な感想なんですが、こだわりの筆記具(万年筆、ボールペン、シャープペン他)に比べて、消しゴムの場合は、ちょっと製品的に「弱い」と言うか、選択肢が少ない気がします。 性能や硬さなどの違い、シード派、トンボ派、ステッドラー派、最近はパイロット派など、好みによるお気に入りはあっても、どれも同じ様なサイズ、形状で値段も基本的に横並び。確かに消しゴムは消耗品ですし、筆記具などとは違うかも知れませんが、ドイツのファーバーカステルからもの凄く高価な鉛筆が発売された様な「事件」は耳にしません(シードさんから1万円のバカデカイ消しゴムが発売されたのは事件かも知れませんが・・・)。

世の中の色々なものが高級化されているのに、消しゴムだけは既存の概念を打ち破った画期的な製品が少ないのではないでしょうか? 何を売ろうか悩んでいる文具業界、次に残っているのはもう消しゴム以外有りません(笑)! と言うことで、私は以前から消しゴムメーカーの人とお話する機会があるごとに、「高級消しゴム」の開発をプッシュしています。 例えば、新発売で今ヒット中のトンボ「モノワン」等は、このプラスチック製ホルダーを金属製にすればアッと言う間に高級化完了!同社の高級筆記具ブランド「デザインコレクション」にも加えられるのでは? なんてことを言っています。

ただ、高級モノワンのアイデア、トンボ鉛筆の営業の人からはおおむね不評です(笑)。実はトンボさんの社内でも既に消しゴムをどうにかする計画、と言うか意見と言うかが存在している様で、その辺も含めて実際に営業に回る人たちは心配しているみたいですね(笑)。「そんなの出されて、これ売って来いといわれたらかなんなー」とのこと。確かに意見を言うのはタダで自由ですけど、実際商売するのは厳しいかも知れませんね。うちもメーカーさんにボンボン意見を出しておいて、実際発売になったら取り扱うかどうか迷うでしょうね(笑)。「え゛っ。マジで出したんすか!?そんな高い消しゴム誰が買うの?って言うか誰が売るの?」みたいな無責任な発言をしてしまうかも知れません(笑)。

でもお客さんが望んでいる部分も有ると思うんですよね。実際、モノワンの高級モデルが有ればは結構売れるとは思います(値段にもよりますが)。 消しゴムのゴム単体で考えると、今の日本メーカー各社の品質や性能はどれもかなりのレベルにあって、安くても「最高級品」と呼べると思います。今後もゴムの性能を上げる努力は必要ですが、それよりもホルダーやスリーブ、ケース等をもっと工夫していけばまだまだ消しゴムでも面白い商売ができるのでは?と、日夜メーカーさんに吹き込んでいるわけです(笑)。

先日、シードの人に、「今、蒔絵を施した高級な万年筆が人気だから、消しゴムのスリーブやホルダーに蒔絵や漆塗りを施して売れば!」なんてことを軽く言ったら、何やらメモをとって帰られました(笑)。ワシャ知らん。まあ、実際やるとなると大変だろうし、一つの意見、と言うことでしょうが、限定品や記念モデルとして蒔絵消しゴムが発売されると面白いかも知れませんね。漆塗りなんかは結構実用的で良いと思うんですが・・・。具体的にどう製品化するかが大いに問題ですね。

消しゴムでも鉛筆もでそうですが、消耗してやがて無くなるタイプの文具と言うのは、一旦その技術が完成の域に達すると、本物志向や高級志向といったニーズとはほぼ無縁の製品でした。そこからの発展や飛躍が無い。 鉛筆の場合は今から40年以上前に、トンボのモノ100、三菱のハイユニが登場し、芯の微粒子化や塗装、木材の最適化が完了した時点でほぼ技術的に完成され、これ以上高級化する部分が無くなったと言われています。消しゴムについても、今から50年ほど前にシード社がプラスチック消しゴムを開発し、それまでの天然ゴム系消しゴムにとって変わった時点で消しゴムとして重要な技術はほぼ完成されたと言えます。 

技術的に高い水準に達し、長年姿を変えずに使い続けられた製品、いわばロングセラー品と言う物は、人間が使う上で合理的なカタチと性能、品質を備えているからこそ、多くの人に受け入れられてスタンダードとなった訳ですから、それをあえて変える必要性は無いかも知れませんし、むしろ変えない方が良いことも大いにあると思います。 ただし、完成されてしまったから、と言ってもう何もしないのは悲しいものです。時流に応じて様々な試みがされていくのがむしろ健全だと思います(勿論、多くのメーカーさんが常に改良を施しておられますが)。

様々な試みの結果、やはり元のカタチ(商売)が良かった、と言うことになる場合も多いと思いますが、モノとしての価値を常に上げていく為にも、値段だけではない高級化というのが必要だと思います。付加価値を上げる、といったほうが適切かも知れませんね。 消しゴムの場合、多くの人が値段やサイズで商品を決められるでしょうが、そういった一般用途としての需要以外に、自分が使うものにこだわりを持つユーザーの需要、と言うものも考えてはどうでしょうか?単に字が消せれば良いと言うことばかりでなく、使って楽しいとか、より便利とか、所有する満足感があるとかいった方向性も大事だと思います。

それから、消しゴムには定番の事務用(一般用)消しゴムの他に、香りつきやネリ消し、食べ物のカタチなどのファンシー消しゴムというジャンルがあり、ユニークな製品が多く、コレクターやマニアもおられるほどの独特の世界を持っています。それはそれで良いのですが、消しゴムメーカーさんが新しい製品を作るとなった時に、どうもその「ファンシー」路線から一歩踏み出せないでいるのも事実ではないかと思います。「大人は定番の事務用消しゴムしか買わない、新製品は子供向けじゃないと売れない」、と思い込んでいる部分も感じます。事務用ともファンシーとも違った「高級路線」、商売として上手くいく保証はありませんが、消しゴム業界では割合その辺の試みが不足していた気がします。

勿論、メーカーさんは日頃から「面白い製品」の開発に頭をめぐらせ、情報収集しておられるので、きっとユニークな製品が登場してくると思います。これから、どんな消しゴムが登場するか、期待して待つことにしましょう!


2007年7月12日  スミ利文具店 藤井稔也



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