コラム 文房具の名入れ 清刷りについて


スミ利では今年、例年になくノベルティー向けの名入れ文具の需要が増えています。やはり一番多いのは、ボールペンなどの筆記具ですが、最近ではUSBフラッシュメモリー関連商品への名入れも増えています。皆さんもパソコンを使われる方なら1個や2個はお持ちではないでしょうか?アイ・オー・データ社やバッファロー社の製品が有名なのですが、これらの製品を販売力の強い大手文具メーカーが代理店として取扱い始めたので、今までに無かった新しいジャンルのノベルティーとして、今最も注目を集めています。ところが、文具業界がそのUSBフラッシュメモリーへの名入れをご提供する様になって、我々の業界の時代遅れな点、努力不足な点が露呈してきたと感じるのです。

一般的な文字のみを印刷する場合には必要無いのですが、企業のロゴマークや指定文字を印刷する場合には、もととなる原稿をお客様からお預かりし、その原稿をもとに名入れに用いる「版(はん)」を製作して印刷を行います。この時、文具店も、文具メーカーも、お客様に対して「ロゴマークの清刷り(きよずり)を用意しておいて下さい」とお願いしてきました。清刷りとは、モノクロのみで作られた精度の高い印刷物のことで、昔から名刺やチラシ、社名入りの封筒などを印刷業者に発注する際にも使われるもので、複写機でコピーしたものや、インクジェットで印刷したものでは奇麗に名入れできないので基本的に不可とされてきました。文具業界のロゴマーク名入れではこの清刷りが常識的に用いられてきたのです。

ところが、最近では、「清刷りって何ですか・・・?」「そんなもの持っていません・・・!」「何年か前にデザイン事務所でロゴを作ってもらった時にもらったけど、今どこにいったか分からない・・・。」等とおっしゃられるケースが増えてきました。それもそのはず、今日の様にパソコンが普及して、様々なデータが電子化されている世の中ですと、殆どの場合はそれらの電子データさえ有れば事足りてしまうのです。名入れの納期が迫っているのに、清刷り自体の製作を別途出入りの印刷業者に発注していただくケースもありました。私自身、IT時代なのに、こんな原始的なことでお客様にご迷惑をお掛けしているな、と感じていましたが、それでも、筆記具を始めとする文具メーカー各社ではロゴマークの名入れと言えば「清刷り!」と相場が決まっていましたので、販売店もお客様も「まあ、それなら仕方ないな」と納得していました。

しかし、ここに来てUSBメモリー製品に名入れをする様になると、文具メーカーも販売店も「原稿は清刷り以外受け付けません!」と言う業界の常識が通用しないケースにぶつかったのです。USBメモリーをノベルティーとして配ろうという企業様ですから、殆どが標準以上のIT化を果たしておられる為、「原稿はイラストレーターのファイルにしてメールで送ります!」とか「自社のホームページのトップ画面にロゴが有るからそれを取り込んで使って下さい」等など、当たり前の様に電子データ形式での原稿受け渡しを指定されるのです。そして、USBメモリを製造するメーカーさんの中には、流石はハイテク機器メーカー!名入れは「清刷り」なんてケチな紙切れは受け付けません!アウトライン化(画像化)したイラストレーター等のファイル形式でのみ受け付けます!なんてところも出てきました、。

で、文具メーカー各社にその辺を問い合わせてみたのですが、最初のうちはあまり思わしくない返事で「可能かどうか調べておきます」だったのですが、結局のところ、やろうと思えばできる仕事だった様です。まだまだ少数派ながら、この様なご要望は全国的に増えているらしく、文具メーカー専属の名入れ業者も既に充分な設備と技術を持っており、電子データでの原稿受け取りも個別に対応していた様です。しかし、今現在、全てのお客様が電子データの提供ができるかと言うと実はそうでは無く、むしろ従来通り清刷りでの原稿提供の方が喜ばれる企業も多いのです。また、電子データの形式や内容によっては使えないものや奇麗に印刷できない場合もあり、トラブルを避ける為にもあえて従来通りの清刷りでお願いしていたのです。ですから、文具メーカーさんや専属の名入れ業者さんが一方的に悪いとも言えないのです。

ですが、文具業界が少々IT活用に無頓着で、あまり積極的にお薦めもしてこなかったのも事実です。もっと最近のお客様のご要望にお応えする姿勢が必要ではないでしょうか?今はともかく、これから先は、今以上に電子データでの入稿が増えるはずですし、その方がメール等でスピーディーにデータのやり取りができ、編集や保存、記録も簡単にできる等、我々販売店にとってもメーカーにとってもメリットが多いと思います。それには、このファイル形式はOK、こちらは駄目と言う様に、対応できることとできないことをはっきりとさせて、お客様に分かりやすく説明する必要があり、それが今後の課題だと思います。

今回は少し、文具店の身内の話が多く、一般のお客様には分かりにくくつまらなかったかも知れませんが、「文具の名入れ」について、従来のやり方では、自分がお客様の立場だったらちょっと不便だな、と感じていましたのでコラムにしてみました。



2005年3月7日  藤井稔也



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